蜂蜜酒物語 1 製法編

 思い立ったが吉日。さっそく、ミード作りに取りかかります。
 
 まずは作り方の再確認。

『水で三倍程度に薄めた蜂蜜に酵母(ドライイースト)を加えて、夏場は2-3日、冬場は1週間ほど発酵させる。』

 ……簡単です。
 
 ヤバいくらいに簡単すぎます。
 
 あまりにも簡単すぎて逆に不安を覚えたので、もう少し詳しく調べてみました。

『蜂蜜:水は重量比で1:2程度が基本。蜂蜜が少なければ辛口に、多ければ甘口に仕上がる。1:5以下では糖分が少なすぎ、1:2以上では多すぎて、いずれもうまく発酵しない』
『酵母によって発酵具合や風味が変わる。パン酵母は入手しやすいが、パン臭のため酒としての風味が劣る』
『パン酵母や天然酵母はアルコール耐性が低く、度数はあまり高くならない(10度未満)。ビール酵母、ワイン酵母は東急ハンズで入手可能』
『市販の蜂蜜だけでは酵母の発酵に必要な栄養素が足りないので、全粒粉か刻んだレーズンを混ぜるとよい。搾りたての蜂蜜であればそれだけでの発酵も可能』
『発酵に要する日数は、文献によって数日〜数週間とまちまち。温度が低いと発酵のペースは遅いらしい。発酵が終わると発泡が止まり、液が澄んでくる』
『途中で発酵を止める場合は、湯煎またはレンジで60℃以上に加熱するか、ウォッカ少量を加える。煮立てると確実だが、アルコールと香り成分が揮発してしまう。』
『発酵が終わったら澱を取り除き、冷暗所で数日〜数ヶ月寝かせておくと熟成されて味が落ち着く。澱をそのままにしておくと、酵母の死骸に起因する雑味が出る』

 だいたいこんなところです。
 
 さっそく、会社帰りにハンズに寄ってワイン酵母を購入。
 その足で輸入食品を扱っている店に向かい、カナダ産ブルーベリー蜂蜜とカリフォルニアレーズンを購入。
 容器は、梅酒を漬けるために買ったものの余りが家にありました。
 水は、これも家にあった未開封の『六甲のおいしい水』。
 
 準備は完了です。
 
 〈つづく〉

※以上の文章はすべてフィクションであり、実在の人物、団体、出来事、酒税法等とは一切関係ありません。
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蜂蜜酒物語 序

 ※以下の文章はすべてフィクションであり、実在の人物、団体、出来事、酒税法等とは一切関係ありません。
 
 最近でこそ自転車のために飲む機会は減っているものの、私は本来けっこうな酒好きですが、それでもまだ飲んだことのない酒というのはいくらでも存在します。
 もちろん、銘柄ではなく「ワイン」「ビール」「ウィスキー」等といったカテゴリーの点でも。
 
 そのうちのひとつに『ミード』があります。
 蜂蜜を発酵させた酒で、ワインやビールと並んで最古の酒のひとつです。
 その昔、栄養豊富な蜂蜜は強壮効果があるとされていたので、新婦は結婚から一ヶ月間、蜂蜜酒を作り新郎に飲ませて子作りに励むという習わしがあり、それがハネムーン(ハニームーン、蜜月)の語源になったそうな。
 
 そんなわけで欧米ではよく知られているミードですが、日本ではかなりマイナーな存在で、そこら辺のスーパーの酒売り場などではまず見かけません。
 もちろん今なら通販で手に入りますし、それほど高いものでもないのですが、そうまでしてどうしても飲んでみたいというわけでないのもまた事実。
 
 そんなある日のこと。
 仕事の合間の息抜きにウィキペディア巡りをしていたところ、蜂蜜酒の製法が目にとまりました。
 
『製法の一例として、水で三倍程度に薄めた蜂蜜に酵母(ドライイースト)を加えて、夏場は2-3日、冬場は1週間ほど発酵させる。』

 ……それだけ?
 そんな簡単に作れちゃうの?
 
 じゃあ、作ってみましょうか。
 
 私は本来、料理とかお菓子とか、豆腐やベーコンや薫製といった加工食品作りとかもけっこう好きです。
 最近はトレーニング最優先の生活で時間がないのでやっていませんでしたが、今の時期は多少さぼってもさほど問題はありませんし、これなら手間はほとんどかかりません。
 仕込みも簡単だし、ほとんどの工程は酵母まかせ。火の管理が必要な薫製よりもよほど簡単です。
 さっそく、ミード作りに挑戦することにしました。
 
 〈つづく〉
 
 
 
 ……なお、
 
 日本では酒税法により、1%以上のアルコール飲料を醸造することは自家消費のためであっても禁じられています。
 なので、蜂蜜酒物語はすべてフィクション。アインシュタインが言うところの『思考実験』です(笑)。
 その点をよくご理解ください。
 
 自分でもやってみようという方は、発酵前の糖度を調整するか(糖度とアルコール度数に関する計算式は、文献を調べれば見つかります)、発酵を途中で止めて、アルコール度数が1%未満になるようにしてください。
 ……表向きは(笑)。
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