32


 そして十分後――
 あたしはもう、先刻の自分の選択を後悔していた。
 やっぱり、あんなこと言うんじゃなかった。公美さんみたいな変態さん相手に。
 その時あたしは、全裸でベッドに横たわっていた。
 ただ裸にされているだけではない。腕は背中に回されて、上半身はローブで縛られている。
 肌に、ロープが喰い込んでくる。ただでさえ大きな胸が、上下から圧迫されてさらに盛り上がっている。
「あ……んくっ……」
 あたしは切ない吐息を漏らした。妖しげな薬で火照った身体は、こんな陵辱さえ快感と受け止めてしまう。
 きつく縛られたロープが与える鈍い痛みすら、気持ちよかった。まるで、力いっぱい抱きしめられているような心地よい圧迫感がある。
 公美さんにはこれまでも、変態ぽいことをされたことがある。だから、縛られるくらいなら、かろうじて許容範囲内だ。
 だけど――
 もう一つのことは、どうかと思う。
 必死に閉じようとする脚を無理やり開かせて、公美さんが裸体を入れてくる。
 今まさにあたしを犯そうとしている公美さんは、男性器を模した器具――ディルドーとかいっただろうか――が生えたパンツを穿いていた。
 これは、ちょっと怖い。
 あたしは男性恐怖症だし、公美さんの指や舌がすごく気持ちいいことは知っているけれど、こんなものは初体験だ。
 無機的な「器具」ということであれば、以前ローターで攻められたことはある。だけどサイズが全然違うし、中途半端に生物的な形状が、かえって不気味さを醸し出している。
 あたしとしては、せめて今日のところは、普通に指や舌でして欲しかった。この間、聖さんとした時のように。
 だけど公美さんは、どうしてもあたしを「犯したい」のだそうだ。その動機は、聖さんとした以上のことをしなきゃ気が済まないという、子供っぽい対抗心だ。
 それは、まあ、理解できなくもない。少しくらい怖くても、我慢してもいいかと思う。
 だけど……
 だけど。
 ひとつだけ、無視できない問題がある。
「あ、あたし……突然、乱視になっちゃったかなぁ? なんだか……二本、に見える……んだけ、ど?」
 あたしは引きつった笑みを浮かべて言った。公美さんが「冗談」で済ませてくれる淡い期待を抱きながら。
 だけど公美さんは、魔性の笑みを浮かべてあたしを見下ろしていた。
「そうよ? 美鳩ちゃん、『お尻』も好きでしょう? これで、前と後ろを同時に犯してあげる」
「いやぁぁぁっっ!」
 あたしは慌てて身体を捩った。
「いやぁっ、ねぇ……せめて普通にしてよぉ」
 涙を浮かべて懇願する。お尻が気持ちイイことは知っている。だけど、あんなに大きなものを挿れられるなんて、考えただけでも怖いのに、しかも前と後ろ同時になんて。
「ねぇ、お願い。それだけは……」
「い、や」
 公美さんは一言で切って捨てる。
「そもそも私たちって、出会いからして普通じゃなかったんだから、初体験はこのくらいやらなきゃ刺激的じゃないでしょ?」
「そんな刺激いらない〜っ!」
 必死の抵抗も虚しく、あたしの太腿を両腕で抱え込んだ公美さんは、腰を前に突き出してくる。
 やっぱり失敗だった。
 いきなり、こんなことになるなんて。
 縛られて、お尻とヴァギナを同時に犯されるなんて。
 いきなり、こんな変態的なエッチだなんて。
 やっぱり公美さんって、根っからの変態さんなのだろうか。
 あの小説が実体験だというなら、高校時代の公美さんはとてもお淑やかで奥ゆかしいお嬢様だったはずなのに。この人ってば、いったいどこで道を踏み外してしまったのだろう。
「さあ、美鳩ちゃん、覚悟はいい?」
「だめっ! 全然ダメ!」
 ぶんぶんと首を振る。だけどもちろん、そんなのなんの役にも立たない。
 あそこに、ディルドーの先端が触れた。ローションを塗ってあるのか、ひんやりと冷たく濡れた感触がある。
 そして、お尻にも同じ感触が。
「ひっ……」
 反射的に、身体が強張る。下半身に力が入ってしまう。
「力を抜きなさい。じゃないと痛いよ」
「そんなこと言ったって……」
 意識して抵抗しているわけじゃない。だけど、反射的に下半身に力が入ってしまう。括約筋がきゅうっと収縮して、異物の侵入に抗っていた。
 力を抜いた方が痛くない、それはわかっている。頭ではわかっていても、身体がいうことを聞くとは限らない。
「……はい、深呼吸」
 あたしの頭を撫でながら、公美さんが言う。
 その言葉に従って、大きな深呼吸を繰り返す。
 吐いて――
 吸って――
 吐いて――
 吸って――
「――って、やぁぁぁっ!」
 少しだけ緊張が解けた……と思った瞬間、公美さんは腰をぐいっと前へ突き出してきた。
 大きなディルドーの先端が、あたしの中に押し込まれる。
「やぁぁっ! いやぁっ、痛いぃぃっ!」
 力いっぱい悲鳴を上げた。なにしろ、手加減なしに一気に奥まで突き入れられてしまったのだ。
 あそこも、お尻も、限界ぎりぎりまで拡げられている。下半身を裂かれるような痛みが走る。
「あぁぁ――っ! いやっ、やだっ! 痛ぁ……いっ!」
 涙が出るほど痛かった。
 収縮力の強いお尻の括約筋を、無理やり拡げられる。苦しさを伴った鈍い痛み。
 そして前は、文字通り引き裂かれるような鋭い痛み。
 ……って、前?
 どうして――?
「痛い……よぉ……、どうして……?」
「そりゃあ、初めてでこんな大きなモノを挿れられたら、痛いに決まってるじゃない」
「でも……あ、あたし……初めてじゃ……」
 初めてじゃない――そう、言おうとした。その前に、公美さんに唇をふさがれた。
「初めてよ。これが、美鳩ちゃんの初体験……そういうことにしよう?」
「でも、だって……」
「小学生の時の、一度きりなんでしょう? だったら、処女膜の傷だって治って再生しちゃうわよ」
「え……? そう……なの?」
「そう。だから、美鳩ちゃんはバージンってわけ。それを破られちゃったんだから、痛くて当然」
「……そ、そんなぁ」
 公美さんってば。
 公美さんってば……。
「それがわかってたなら、もっと優しくしてよ! こんな乱暴に……」
 あたしは泣きながら叫んだ。だけど公美さんはしれっとした顔で言う。
「だぁって、美鳩ちゃんの泣いている顔も可愛いんだもの」
「ばかぁっ、嫌い!」
 ぷいっと顔を背けようとする。だけど両手で顔を掴まれて、またキスされてしまう。
「大好き」
「うるさ……あぁっ!」
 公美さんの腰が、前後に動きはじめる。とたんに、あたしは文句を言うどころではなくなってしまった。
 あたしの身体を貫いた、プラスチックとシリコンでできた二本の杭。それが与える刺激は、あまりにも荒々しかった。
 一本は、あたしのバージンを引き裂いて、膣内をいっぱいに満たしている。
 もう一本は、直腸の奥深くまで届いている。
 薄い肉壁を隔てて、それぞれがあたしの中で暴れている。
「あぁっ! やぁぁっ、あぁっ、あっぐぅぅ……あぁっ!」
 繊細な粘膜が擦られる激しい刺激。頭がぐちゃぐちゃで、それが前なのか後ろなのかすらわからなくなってしまう。
 無理やり拡げられる痛み。
 引き裂かれた粘膜の傷を擦られる痛み。
 一番深い部分を突き上げられる、内臓にずんと響くような痛み。
 そして、苦しいような圧迫感。
「あぁ……ぁ、はぁぁ……う、うぅぅっ……くぅんっ!」
 涙が止まらない。
 だらしなく開いた口からは、涎が溢れている。
 痛みと苦しさで身体を捩りたくなるけれど、そんなことをしたら自分自身により強い刺激を与えることになってしまう。あたしはピンで縫い止められた昆虫採集の標本みたいに、下半身を貫かれたまま身動きできずにいた。
 だけど公美さんは遠慮なしに腰を前後に揺すって、あたしから無理やり嗚咽を引き出そうとしている。
 それとも、これでも遠慮しているつもりなのだろうか。以前友達に見せてもらったアダルトビデオに比べると、ずいぶんゆっくりした動きのような気がする。
 もちろん、これ以上速く動かれたりしたら、あたしは本気で悲鳴を上げるだろう。呼吸に合わせて往復しているような、ゆっくりとした今のペースが、なんとか我慢できる限界だった。
「可愛いわよ、美鳩ちゃん」
 公美さんが紅潮した顔で言う。
「やぁぁ……いやぁ」
「前も、後ろも、ぎゅうぎゅうに締めつけてる。ちょっと、血が出ちゃってるわね」
「やだぁ……やだってばぁ……」
「でも、すごく濡れてる。こんなに太いのをくわえ込んで、襞が絡みついてきてる。下のお口が、涎を垂らしてるわ」
「あぁんっ、言わないでよぉ……あぅっ、んんっ」
 公美さんってば、やっぱりサドだ。
 あたしを泣かせて、苛めて、楽しんでいる。
 痛くて、苦しくて、恥ずかしくて。あたしが泣いているのに、公美さんはとっても気持ちよさそうにしている。
「あぁ……いい、すごくイイ」
「やっ……あぁっ! だっ、めぇ……あくぅっ! ふ……あっ!」
 自分も気持ちよくて歯止めが効かなくなってきたのか、公美さんの動きが激しくなってくる。あたしの中に激痛が走る。
「やぁぁっ! あぁぁんっ、あぁぁっっ!」
「みく……ちゃ、あぁ――っっ!」
 突然、公美さんがあたしの上に倒れ込んできた。汗ばんだ肌が密着する。
「……え?」
 一瞬、なにが起こったのかわからなかった。突然のことに、あたしは痛みも忘れてしまった。
 耳元で、荒い息づかいが聞こえている。
 これって、まさか……。
「あ……はは……イっちゃった」
「えぇ?」
 あたしは目を丸くした。いくらなんでも、早過ぎやしないだろうか。
 公美さんがあたしを貫いてから、まだほんの二、三分しか経っていないはずだ。
「……もう?」
「だって……」
 公美さんは気まずそうに視線を逸らす。
「ずっと、したいしたいと思っていた美鳩ちゃんと、念願かなってようやくエッチできたんだもの。我慢できなかったわ」
 そう言って、ちゅっと唇を重ねてくる。
「美鳩ちゃんと知り合ってから、他の女の子とは一度もエッチしてないのよ。以前は『新宿の美少女キラー』とまで呼ばれたこの私が。もう、限界まで溜まっていた」
「……そんなに我慢しないで、他の女の子とエッチすればよかったじゃない」
「そんなことしたら、美鳩ちゃんがやきもち妬くでしょ?」
「ううん、全然」
 即答すると、公美さんは唇を尖らせてあたしの頭を小突いた。
「意地悪な子ね、もう」
「それより……終わったんなら、これ、抜いてよぉ」
 あたしの下半身は、まだ、二本のディルドーに貫かれたまま。動きが止まっても、無理やり拡げられる痛みは残っている。
「なに言ってるの。まだまだ、これからよ」
「えぇっ、だって!」
「一度だけ、なんて約束はしてないわよね?」
「そんなぁっ!」
 じたばたと暴れるあたしの肩を、公美さんは両手でしっかりと押さえつけた。上半身は縛られたままだから、これでは抵抗することもできない。
 また、公美さんが動きはじめる。
 腰が、リズミカルに前後する。
「やっ、あぁっ、だめっ! あっ……あぁっ、くっ……ぅんっ!」
「……今度は、美鳩ちゃんが気持ちよくなるまで続けるからね」
「や……そんなぁ……あぁんっ! やぁぁんっ!」
 公美さんの手が、あたしの足首を掴む。
 両脚を、大きく開かされてしまう。
「ほぉら、美鳩ちゃんの恥ずかしいところが丸見えよ」
「やだっ……あんっ、あっ、やぁぁ……」
「太いモノを、根元まで呑み込んでるの、わかる?」
 言いながら、ぐいっと腰を突き出してくる。
「あぅっ……うぅんっ、はぁぁ」
 ズンッ……って、奥に当たるのを感じる。胃が、お腹の下から突き上げられるみたい。
 痛いっていうよりも、苦しい感じ。
 お尻の穴が拡げられる鈍い痛みは相変わらずだけれど、破瓜の痛みは薄れつつあった。痛みを感じる神経が麻痺してしまったのかもしれない。
 そして、少しだけ。
 少しだけ、気持ちよくなってきていた。
 リズミカルな抽送に合わせて漏れる声が、だんだん、甘くなってきている。
 深々と貫かれているあそこが、蜜を滴らせているのを感じる。
 乳首が、固くなってる。
 あたしにとっては激しすぎるはずの乱暴なセックスなのに、それでも、身体は感じ始めていた。
 一度そのことを意識してしまうと、それから先は加速度的に快感が強まっていく。
「あぁんっ……あっはぁ……んんっ、んふっ……くぅん、あんっ」
 一往復ごとに、微妙に角度を変えて前後する公美さんの腰。まるでポンプみたいに、あたしの中に快感を送り込んでくる。
 いっぱいに快感を詰め込まれた身体は、風船みたいに膨らんでいくような気がした。
 だって、ほら。
 なんだか、頭がふわふわする。
 なにかに掴まっていないと、どこかへ飛んでいってしまいそう。
 公美さんに抱きつきたかったけれど、腕は背中側で縛られている。あたしは他にどうしようもなくて、脚を公美さんの腰に絡ませた。
 両脚でしっかりと、公美さんを掴まえる。
「んっ……んぁぁっ……ぅんっ、あふぅん……あぁんっ」
「気持ち、いいの?」
 耳たぶを噛みながら、公美さんが訊く。
 あたしはがくがくと頭を振った。
「うン……いい、イイの……気持ち、イイの……」
 素直に、そう言えた。
 だって、今日はちゃんと言い訳があるから。
 公美さんに、エッチな薬を飲まされちゃったから。
 だから、お尻まで犯されて感じちゃったとしても仕方がない、あたしのせいじゃないんだって。
 だから、素直におねだりすることができた。
「ねぇ……もっと……もっとぉ、気持ちよくなりたいの」
 そんな懇願に応えるように、唇が重ねられる。あたしは自分から舌を伸ばした。
 ぎゅっと、抱きしめられる。
 密着した体勢で、公美さんの腰が小刻みに動いている。擦りつけるように、中をかき混ぜるように。
「イイ……イイの……あぁんっ、イイッ!」
 あたしも、公美さんの腰に回した脚に力を込めた。
 一番深い部分までつながって。
 一番深い部分をかき混ぜられて。
 あたしの、一番深い部分まで愛撫されている。
「ひぃ……いいっ! あっ、あっ、あはぁっ!」
「美鳩ちゃん……美鳩ちゃん!」
 公美さんの汗が、ぽたぽたと降りそそぐ。
 もう、限界。
 一瞬だけ息を止めて――
「……あぁっ、あぁぁっ! あぁぁぁ――っ!」
 あたしは、すべてを解き放った。



「ふやぁぁ……」
 頭の中に白い靄がかかったような感覚。
 それは、どのくらい続いていたのだろう。
 だんだん、意識がはっきりしてくる。
 いつの間にかロープも解かれていて、あたしは公美さんに抱きしめられていた。
「あたし……気ぃ失ってた? どのくらい?」
「十分くらいかな。気持ちよかった? 初めてで失神するくらい感じちゃうなんて、私のテクニックもたいしたものね」
「……なに言ってンのよ。薬のせいじゃない」
 あたしはわざと冷たく言った。
 変な薬を飲ませて犯したんだから、あんなに感じてしまったのも公美さんの手柄ではない――そう、思っていた。
 だけど。
「薬って、なんのこと?」
 公美さんが悪戯な笑みを浮かべる。
「なにって、だって、先刻……」
「あれ、ウソ」
「う、ウソって……っ」
「いくら私でも、本命の女の子を落とすのに反則はしないわよ」
「じゃ、じゃあ……だって……あの、身体が熱くって、すごくしたくなったのは? 初めてなのにこんなに感じちゃったのは?」
「私の、愛とテクニックの勝利ね。つまり君は、初体験で、一緒にお尻まで犯されて、それでも自分からおねだりして失神するくらいに感じちゃったってわけ」
「――っ」
 あたしは、二の句が継げなかった。
 酸欠の金魚みたいに、ただぱくぱくと口を動かすだけ。
 だって、そんな。
 薬のせいだから、あんなことされて感じてしまっても仕方ないんだって、そう思ったのに。
 だけど実は、薬なんか飲まされてなかったなんて。
 それなのに、信じられないくらいに感じてしまった。
 縛られて。
 前はおろか、お尻にまで太いモノを挿れられて。
 それなのに、感じてしまった。
 そんなのって……そんなのって。
「まあ、美鳩ちゃんが失神するほど感じちゃうのも当然だけどね。愛する人にされることなら、どんなことだって気持ちイイもの」
 あたしの困惑をよそに、公美さんはけらけらと笑っている。
 だけど、公美さんの意見は自惚れも甚だしい。
「なにが『愛する人』よ、バカ」
「私のこと、愛してないの?」
「どーゆー勘違いをすれば、あたしに愛されてるなんて思えるわけ?」
 この人、自分がこれまであたしに対してなにをしてきたか、憶えていないんだろうか。
「じゃあ美鳩ちゃんは、好きでもない相手にお尻まで犯されてイっちゃうようなインランなんだ?」
「……ち、違うもん!」
 あたしは頭を左右に振った。それだけは、認めることはできない。
 だけど、あたしが公美さんを愛してるなんて。
 それも認めない。
 今となってはさすがに、公美さんのことが嫌いとは言わない。だけど、恋愛感情を持っているかとなると話は別。
 多分、違う。
 だって。
 公美さんと最後までエッチした後でも、あたしの、公美さんに対する感情が変わったようには思えない。
 普通、本当に好きな人と結ばれたら、きっと、もっと感動というか満足感というか、そんな想いがあるはずじゃない?
 激しいエッチで肉体的にはくたくただけど、精神的にはいつもの、強引に痴漢された後とあまり変わらない。
 だからきっと、『愛してる』わけじゃないんだって。
 そう思った。
「ほんっっとにしぶといね、君。いい加減、私の彼女になっちゃいなさいよ。そうしたら毎日、もっと気持ちイイことしてあげるのに」
 手のひらであたしの胸を弄びながら、公美さんが言う。
「いりませんよ〜っ、だ」
 あたしはべ〜っと舌を出した。
「あ〜あ、こんなはずじゃなかったのになぁ。最後までやっちゃえば、もう身も心も私のものだと思ったのに」
「あたしは、そんな簡単に落ちる女じゃないもん」
「聖子ちゃんには簡単にさせてあげたくせに」
「それは……まあ、その人の普段の行いというか、誠意の問題でしょ」
「性意? それなら溢れるほどに……」
「だからっ! そ〜ゆ〜ところがイヤ!」
「……仕方ない。じゃあ、もう一回」
 公美さんの身体が、あたしの上に覆い被さってくる。
「ど、どうしてそうなるのよっ?」
「だから、うんと感じさせて、もう私なしじゃいられない身体にしてあげる」
「いやぁぁっ!」
 指が、敏感な部分に触れてくる。
 もちろん、抵抗しようとした。
 だけど公美さんのテクニックは、それを許さなくて。
 あたしの身体はまたすぐに、快楽の虜になってしまった。

 ……そして。
 結局この日は一晩中、何度も何度も。
「いっそ殺して!」って泣きたくなるくらい、めちゃくちゃに感じさせられてしまって。
 次の日の朝は腰に力が入らなくて、起き上がることもできなかった。



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