らっきー・らてぃっしゅ・ほーす


「梨花、馬は好きか?」
 学校帰り、いつものように上村くんの家に寄ってラッキーとじゃれ合っていると、不意にそんなことを訊かれた。
「そうね、馬刺はけっこう好きかな。牛肉よりもくせがなくて食べやすいよね」
「いや、そうじゃなくて」
 机に向かっていた上村くんが身体をずらす。机に置かれていたパソコンのモニターが、私の位置からも見えるようになった。
「こーゆーの、どう思う?」
「……っ!」
 思わず、息を呑んだ。
 モニターには、大柄な白人女性が前屈みになって木の柵に手をつき、背後から馬にのしかかられてる動画が映し出されていた。
 びっくりするくらいに大きな馬の性器が、陰部に深々と突き刺さっている。興奮した牡馬が身体を揺すって腰を突き出す度に、女性は悲鳴のような喘ぎ声を上げていた。
 おそらく、海外のアダルトサイトで見つけた動画なのだろう。
 私は声を失って、その光景に見入ってしまった。
 初めて見た。
 牡犬と人間の女性との性行為なら、画像や動画は何度も見たことがあるし、なにより自分自身で経験しているし、その場面を上村くんが撮ったビデオで嫌というほど見せられている。
 だけど、馬との行為なんて初めて見た。
 私は犬好きでラッキーを愛しているのであって、別に獣姦そのものが好きというわけではない。アブノーマルな行為故により興奮していることは事実だけれど、それも愛情があればこそだ。だから、犬以外の動物を相手にした行為には特に興味はない。
 そもそも、人間と馬がセックスできるなんて考えもしなかった。なんといっても身体の大きさが違いすぎる。
 ラッキーは犬としては大きい方だけれど、それでも体重は私より少し重い程度。性器の大きさも、平均的な日本人男性よりは大きいものの、それでもなんとか受け入れられるレベルだ。
 だけど、いま見ているものはまったく桁が違う。
 馬の体重って、競走馬で四百から五百キロくらいだったろうか。私の十倍以上だ。
 そして性器についていえば、そもそも人間や犬のそれと比べること自体が間違っている。あれと比較対照になるものといえば、人間の腕とか、野球のバットとかだろう。太さは、身体の大きな白人女性ならなんとかなるかもしれない。しかし長さに至っては、胎内に受け入れられるのは先端のほんの一部分だけだ。
「どうだ? 観ていて興奮する?」
 上村くんが隣に移動してきた。私の身体に腕を回して抱き寄せると、最近伸ばしている髪をかき上げて、うなじや耳にキスをしながら耳元でささやく。
「あーゆーの、やってみたくないか?」
「え?」
「実は、静内で牧場やってる親戚がいるんだよな」
「……上村くん、君ねぇ」
 私はこれ見よがしに、大きな溜息をついた。
「私のこと、なんだと思ってるの? 私はラッキーが好きだから、彼と……エッチしてるの。別に、動物ならなんでもOKの淫乱獣姦マニアじゃないのよ?」
「ラッシーやエースとだって、悦んでやってんじゃん?」
「あ、あれは……」
 一瞬、口ごもる。
 ラッキーと瓜二つの兄弟たち。兄弟三頭を相手にしての乱交じみた行為は何度か経験しているが、確かに気が遠くなるほどに気持ちがいいものだった。始めるまでは少し抵抗があるものの、一度火がついてしまえば、狂ったように三頭を求め続けてしまう。
「あ、あれは……君が無理やりやらせてることでしょ! それに、ラッシーやエースはラッキーの兄弟だし、外見も性格もよく似てるし……。とにかく、私は愛のないエッチなんてしたくないの! 君、ラッキーと私の飼い主のくせに、浮気を勧めるわけ?」
「浮気だなんて、そんな大げさな」
 背後から抱くような態勢で私の胸を弄びながら、上村くんは笑う。
「俺が梨花の浮気を許すはずがないだろ」
「だったら、何故そんなこと言うの」
「浮気じゃなくて、プレイだよ。ここでの馬は、浮気相手じゃなくて単なる道具。バイブとか、キュウリとかナスとかと一緒。お前、そーゆーの好きだろ?」
「……それこそ、君が無理やりやってることじゃない」
 どちらかといえばクールで硬派な外見とは裏腹に、上村くんはすごくエッチなのだ。いろいろと普通じゃないエッチを私に強要して楽しんでいる。
 いま挙げたような、指や性器以外の異物を挿入されたり。
 縄で縛られたり、ロウソクを垂らされたり、あそこの毛を剃られたり。
 首輪をつけられて、夜の公園を裸で散歩させられたり。
 そして、そんな場面をビデオに撮られて、冷静な時に見せられたり。
 しかし、私の方にもあまり強く文句を言えない事情がある。
「悦んでるくせに」
 上村くんが独り言のようにぼそっと言う。
 そう。
 問題はそこだ。
 強制的にされているはずのアブノーマルな行為なのに、感じてしまうのだ。
 正直に白状すると、私はエッチなことが好きだ。高校生といえば誰でもエッチなことに興味のある年頃だけど、多分、平均的な女子高生よりも性的な好奇心は強いのではないだろうか。そして、普段の生活態度が真面目な反動なのか、あまり普通ではない行為に、より興奮してしまう。
 上村くんと関係を持つようになって思い知らされたことだけれど、私にはマゾの気があるらしい。普通の女子高生にはとうてい受け入れられないような恥ずかしい行為を強要されることに、昂りを覚えてしまうのだ。
「想像してみると、すげー興奮しない? 梨花があのでっかいモノをぶち込まれて泣き叫んでいるところ、俺も見たいなぁ」
「……そんなの、やだもん」
「とか言って、興奮してるくせに」
 セーラー服の横のファスナーを上げて、上村くんは手を差し入れてくる。ブラのフロントホックを手早く外し、大きな手で私の胸を直に愛撫してくる。
「や……、だ」
 私は身体を捩らせて、その手から逃れようとした。だけど、もう手遅れだ。触れた瞬間に気づかれてしまっただろう、先端の突起が固くなっていることに。
 それは仕方がない。私の視線はパソコンのモニターに釘付けになったままだった。自分でしたいとは思わなくても、変態的な性行為に対する興味は強い私のこと、見るまいと思っても視線がそちらに向いてしまう。
 画面では今、結合部がアップになっているところだった。黒い杭のような馬のペニスが女性器を貫き、もう一人の女性が抜けないように手を添えている。
 こんなものを見せられて、平常心でいられるわけがない。胸は固く張っているし、ショーツの中は急激に湿度が上昇して、上村くんの指か、ラッキーの舌が触れてくれるのを待ち望んでいた。
「……あ、ん、……くぅん」
 上村くんは、執拗に胸を揉み続けている。人差し指と中指で乳首を挟んで刺激を加えながら、手のひら全体で乳房をこね回す。
 その愛撫はたちまちのうちに、私の性的興奮を臨界点まで引き上げてしまった。下半身に力が入らなくなって、頭の中がピザのチーズみたいにとろけてしまう。私は上村くんにもたれかかるようにして、彼が与えてくれる快楽に身を委ねていた。
 最近、胸がすごく感じるようになってしまっている。
 ラッキーや上村くんと関係を持つようになってから半年ちょっと。そのことと関連があるのかどうかは不明だけど、胸の大きさは半年前に比べてずいぶん成長していた。それに比例するように、感度も増しているような気がする。
 上村くんに乳房をこね回されること、ラッキーの大きな舌で乳首を舐められること。どちらも、それだけで達してしまいそうなほどに感じてしまう。
「あっ、……かみ……むら、くぅ……ン、あぁっ!」
 不意に、乳首を強く摘まれた。その刺激で、軽い絶頂を向かえてしまう。だけど、それで昂りが治まったりはしない。私のエッチな身体は、むしろここから本格的に燃え上がるのだ。
 私は、無意識のうちに脚を拡げていた。その中心にあるものを愛撫して欲しいとねだるように。もう、ショーツには楕円形の染みができているはずだ。
「上村くぅん……お願い、下も……」
 上村くんに身体を預け、精いっぱい甘えた声でおねだりする。普段の私からは、自分でも想像できない『女の子らしい』仕草だった。
「触って欲しい?」
「……ぅン」
「イキたい?」
「うん……もう、我慢できない……よぉ」
 恥じらいとか慎みなんて言葉、頭の中からすっかり消え去ってしまっている。私はもう、上村くんとラッキーが与えてくれる快楽の中毒だった。
「ね、私……もぉ……」
「ダメ、触ってあげない」
「え?」
 意外な台詞に驚いて、後ろを振り返ろうとする。だけど上村くんはしっかりと私を掴まえて、執拗に胸を攻め続けている。
「一緒に静内に行くって約束したら、いくらでもイカせてやるよ」
「――っ!」
 その一言で、彼の術中にはまったことを悟った。
 かなり、まずい状況だった。この半年間の調教で開発された身体は、快感に対する耐性がまったくといっていいほど欠けているのだ。上村くんやラッキーの愛撫を受け始めたが最後、徹底的に絶頂を迎えなければ収まりがつかない。
 今も、火照ったヴァギナを触って欲しくて仕方がない。ペニスを挿れて欲しくて仕方がない。もう、我慢できない。
 だけど、上村くんは私が望むことをしてくれない。して欲しければ、馬とのセックスを受け入れろと言う。
 まずい。本当にまずい。
 これ以上焦らされたら、頭がおかしくなってしまう。理性的な判断ができなくなって、馬だろうと牛だろうと、首を縦に振ってしまいそうだ。
 だけど、そればっかりは受け入れてはいけない提案だった。
「……ラッキー、来て」
 私は最愛の恋人(恋犬?)に視線を向けた。上村くんがしてくれないなら、ラッキーにしてもらえばいい。
 だけど……
「ラッキー、待て」
 立ち上がりかけたラッキーは、上村くんの声でその場に伏せてしまった。なんだかんだ言っても彼は犬である。恋人よりも飼い主の命令の方が優先順位は高い。
「……上村くん、いじわる」
「だから、俺の言うことをきけば、うんと気持ちよくしてやるって」
 言いながら、一瞬だけショーツの濡れた部分に触れてくる。指先だけの軽い接触なのに、私には高圧電流を流されたような衝撃だった。身体の中から、蜜がとめどもなく溢れてくる。
「ひっ……ぃ、……あ、ぁあ……」
 だらしなく開いた唇から、涎が滴る。
「挿れて欲しいか?」
「欲しい……欲しいのぉ……、お願い、お願いぃ……」
「仕方ない、挿れてやるよ。……ただし、こっちにな」
「……あっ!」
 いきなり背中を押されて、前のめりに絨毯の上に突っ伏した。膝をついて、お尻だけを持ち上げたエッチな姿勢にされてしまう。
 絞れば蜜が滴りそうなほどに湿ったショーツが引きずり降ろされる。濡れた性器が外気に触れて、ひんやりと冷たく感じた。
「ひぁっ? だめっ、上村くん……そこは!」
 上村くんは溢れ出た蜜を指ですくい取って、私のお尻の穴に塗りつけた。そのまま、指を挿れてくる。
「だめ、ぇ……そこは……やぁぁ」
「挿れて欲しいんだろ? 指なんてケチなこと言わずに、俺のを挿れてやるよ」
「やぁぁっ!」
 ジーンズのファスナーを下ろす音。
 上村くんの両手が私のお尻を左右に拡げ、その中心に固い弾力のある物体が押しつけられる。
「やっ、だめっ! あっ、あぁんっ、あっはぁぁっ!」
 窄まろうとする括約筋を押し拡げて、上村くんが入ってくる。
 ずぶ……ずぶ……。
 深く、どこまでも深く。
 挿入はスムーズだった。いつも尻尾付きのアナルバイブを挿れられているし、上村くん自身を受け入れるようになってからも、もう二ヶ月以上が経っている。私のお尻は、立派に性器として機能するようになっていた。
 大きな上村くんのペニスが、どんどん奥へと侵入してくる。日本人男性としてはかなり長いものが、根元まで深々と打ち込まれた。
「う……ん、く……ぅん……や……ぁ、いやぁ……」
 鈍い痛みと、圧迫感を伴う快感。
 一度動きを止めた上村くんが腰を揺すり始めると、私はさらに崖っぷちへと追いつめられた。
 最初の頃は抵抗もあったお尻でのセックスだが、最近はずいぶん慣れてきた。お尻でも、ちゃんと気持ちよくなることはできる。
 だけど、イケないのだ。
 もうちょっとで達しそうなぎりぎりのところまでは感じるのに、まだ、お尻だけでは最後までイケないのだ。同時に前にも刺激を与えてくれれば、前だけの挿入よりもずっと感じるのだけれど。
 もちろん、私の身体を知り尽くしている上村くんが、そのことを知らないわけがない。ここで私のお尻を犯しているのは、よりいっそう焦らす意図によるもの以外のなにものでもない。
 自分の指で前に触れようとしても、その度に上村くんの太い腕に掴まえられてしまう。
「やだっ! あぁっ、あぁんっ! だぁ、め……ダメぇっ!」
 気持ちがいい。
 気が遠くなりそうなほどに、気持ちがイイ。
 なのに、イケない。
 イクためには、あとほんの少し、ほんの少しのなにかが足りない。
 そして上村くんは、そのなにかを決して与えてくれない。
 間合いを取った長いストロークで、腰を強く打ちつけてくる。ちょうど、パソコンの画面の中の牡馬と同じタイミングで。
 そのせいで、本当に馬に犯されているような気分になってしまう。
「あぁっ、あぅっ……うぅんっ! あぅぅんっ!」
「どうだ、リカ。気持ちイイだろ?」
「イ……い……あぁっ! かみっ、むら……っ、くぅんっ!」
「きっと、本物の馬ならもっと気持ちイイぞ」
「や……やぁ……ヤダ、ぁ……あぁっ!」
 まずい。
 もう、本当に。
 うなずいてしまいそう。
 なんでもするからイカせてって、おねだりしてしまいそう。
 もう、馬でもなんでもいいかなって思ってしまう。
 私の中で、悪魔がささやく。
 これまでだって、さんざん変態的な行為に身を委ねてきているじゃない。今さら、馬の一頭や二頭なんだっていうの。
 うなずいてしまえば、楽になれる。
 必死の抵抗を続ける理性の最後のひとかけらは、今にも淡雪のように溶けてなくなってしまいそうだ。
「なぁ、リカ?」
「は……だ、めぇ……。ダメ……」
 涙と涎を垂れ流しながら、なんとか首を左右に振る。
「今日は、ずいぶんしぶといな」
「だって……あぅあっ、だってぇ……」
 いくらなんでも、こればっかりは受け入れちゃいけない。
 どんなことにも、限界があるものだ。どう見ても、馬との行為はそれを超えている。精神的にも、そしてなにより物理的にも。
「あ、あんなの……無理……私、ホントに壊れちゃうよぉ……。そうしたら、もうラッキーとも上村くんとも……できなくなっちゃう……」
「……くそっ」
 上村くんは、不意に腰の動きを止めた。私の腰に腕を回して身体を起こさせる。私はお尻を貫かれたまま、上村くんの上に座らされたような格好になった。
「今日のところは許してやるよ」
「……え?」
 あまりにも意外な言葉だった。抵抗を続けながらも、私は内心もう諦めていたのだ。これまで、一度やると言った以上はどんなアブノーマルな行為も強要してきたのに。
「あそこで、ラッキーだけじゃなく俺の名前も出したからな。ご褒美だ。ラッキー!」
 背後から太腿を掴んで脚を開かせると、上村くんはラッキーを呼んだ。十分その気になっていたのにお預けを喰らわされていたラッキーは、人間には真似のできない反射速度で私の上に乗ってきた。
「あ……あぁぁっ! あぁぁ――っ!」
 だらしなく水漏れを起こしていた私のヴァギナに、ラッキーが栓をする。すっぽりと収まったラッキーのペニスが、私の中で大きくなっていく。
 これこそ、待ち望んでいたものだった。限界まで焦らされていた私は、ラッキーが入ってきた瞬間に絶頂を迎えてしまっていた。
 だけどもちろん、ここまで昂ってしまった身体が、一度イったくらいで満足するはずがない。私は半ば失神しかけた状態のまま、無意識に腰を振っていた。
 気持ちがイイ、なんて言葉で表現できる感覚ではなかった。
 上村くんのものに深々とお尻を貫かれたまま、ラッキーのペニスに膣を満たされ、瘤が中で大きく膨らんでいく。
 固い上村くんのペニスと大きなラッキーの瘤が、直腸と膣の薄い肉璧を隔てて擦れ合っている。
 上村くんだけでも、ラッキーだけでも、小柄な私の中を一杯にするには十分すぎる。なのに前後同時に犯されて、下半身が張り裂けてしまいそうだ。
 膣口も、肛門も、一杯にまで拡げられている。小さな身体が悲鳴を上げている。
 痛いくらいの刺激なのに、私は無意識のうちに腰を揺すってしまっていた。上村くんも私を抱きかかえるようにして、下から突き上げてくる。
 初めてだった。
 ラッキーと結合した状態で上村くんに口を犯されるのはいつものことだし、アナルバイブを挿れられた状態でラッキーや上村くんとするのも日常茶飯事だ。
 だけど、作り物ではない熱い肉棒に前後同時に犯されるのは、初めてだった。
 これまで経験したことのない、激しい刺激。全身の神経が過負荷に耐えかねてショートしてしまいそうなほどの快感。
 一突き毎に、私は絶頂を迎えていた。これまで焦らされていた分を取り返そうとするかのように、何度も何度もイキ続けた。
 立て続けの十数回のエクスタシーの後、ついに限界に達した私は、ラッキーと上村くんが終わるのを待たずに気を失ってしまった。



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