■ | 主催 | : | DoRide |
■ | 開催場所 | : | 小樽天狗山 |
■ | 車種 | : | MTB |
■ | 概要 | : | クロスカントリー |
■ | クラス | : | エリート(5周回) |
初めてのクロカンコースを試走すると、毎回「ダメだこりゃ」と思うものだが、今回は極めつけだった。
スタート直後のゲレンデ部分を除けばほとんどがシングルトラックで、石や木の根、路面の凹凸も多く、テクニックで速度にかなりの差がつきそうだ。
しかも1周4.5kmという長さ。手稲の倍、士幌の1.5倍。このコースを5周と考えただけで少々うんざりしてしまう。
唯一の救いは、今回からエリートクラスということで、勝たなきゃならない、表彰台に登らなきゃならないというプレッシャーがないことだろうか。
今回の目標は、まずラップされずに5周完走すること、そしてうまくいけば一桁順位ということでレースに臨んだ。
レースは予定通り13:30にスタートした。
新米エリートということでエリート最後尾からのスタートだが、コースが広いことと参加人数が少ないことで、最後尾といっても二列目。スタートダッシュが下手な私にとってはありがたい。
号砲が鳴り、選手が一斉に飛び出す。
スタート直後はエキスパートの選手も上がってきて、やっぱり順位を下げてしまう。
しかし、ここまでは予想の範疇。
天狗山はスタート後にまずゲレンデを登るコース。テクのいらない登りは私の戦場だ。
今回の作戦は、とにかく1周目の登りで先頭集団まで追いつき、あとは行けるところまでついていくというものだった。
作戦と呼べるほどのものではないが、エリートクラスのレースがどのくらいのペースで展開するものかもわからないのだから仕方がない。
先頭はやはりおぞねっちが引き、主要メンバーがその周囲を固めている。
それを追って、やや強引なダンシングでメイン集団をゴボウ抜きにする。
さすがにかなり脚を使ってしまうことになるが、ここで前に出られなければ勝負にならないのだからやるしかない。
最初の登りの頂上近くで4〜5位あたりまで順位を上げたところでペースを落とし、先頭集団についていく。
ここからはエリートライダーの走りを勉強する時間だ。
一度ゲレンデを下って、シングルトラックの登りに入る。
ここは先頭も抑えた走りをしている。
しかし、ゲレンデ上部を横切って曲がりくねった長い下りに入ると、テクニックの差が歴然としてきた。
こちらも手を抜いているつもりはないのに、コーナーの度に前との差が広がってしまう。この区間は試走時に転倒した恐怖感もあって、あまり強引には攻められない。
それでも神社を過ぎた橋のところで、また前の選手に追いついた。
ここはよほど上手く乗らないと乗車したままの通過は難しい。橋の手前で素直に降りて、橋とその先の岩場は押してクリアする。
前の選手よりも一足先に乗車し、ここで順位をひとつ上げる。
この先はだらだらと続く登り基調のシングルトラック。先頭グループとの差はかなり開き、木々の隙間から小さく背中が見えるだけになっていた。
まだ1周目、無理はできない。
そもそも、この荒れたシングルトラックでは、多少無理をしたところで山を走り慣れているエリート上位陣に追いつけるわけがない。
とりあえずペースを保って走り続ける。
前はそう簡単には追えない。後ろとの差はあまりない。持久戦の始まりだ。
2周目。
ゲレンデの登りはそつなくクリアしたが、その後のシングルトラックで急に辛くなってきた。
登りなのにペースが上がらない。
続く下りはなんとか乗りきったものの、橋のところの押しでふくらはぎが攣りそうになった。
乗車で一度ミスをし、脚の状態はさらに悪化する。
仕方ないので後ろの選手を一度先に行かせて、ペースメーカーにしようと考えた。
しかし、思うようにペースが上げられない。
少しずつ距離が開いていく。
きつい。
脚が痛い。力が入らない。汗が滝のように滴り落ちる。
もうダメだ。もう走れない。
ちくしょう、もうやめだ。
ここでひっくり返って、レースが終わるまで昼寝してやる!
本気でそう思った。
レース中、走るのがこれほど嫌になったのは初めてだった。
それでも脚を回し続ける。
とにかく行けるところまでは行ってみよう。昼寝するならじめじめした林の中よりもゲレンデの端の木陰の方が気持ちいいだろうし、と。
最高点を超えてコースが下り基調になったところで、ようやく少しだけ回復して息をつくことができた。
順位をひとつ下げて3周目に入る。
2周目中盤に比べると、ずいぶんと楽になってきた。
下り区間で多少なりとも回復できたためか、それともゲレンデの登りが見えてきたためだろうか。
脚は相変わらず今にも攣りそうな状態だったが、それでも「この坂は登れる」という確信があった。
クライマーとして売っている以上、ギャラリーのいる登りで無様な姿は見せられない。
フィードゾーンの前では、エンドバーを握って腰を浮かせる。
力尽きた瀕死のダンシングではなく、ペースを上げるための攻めのダンシング。
本当に、この区間だけは力とやる気が湧いてくる。
前との差はかなり開いてしまったが、諦めるわけにはいかない。後ろとの距離もかなりあるようだが、K子さんやK藤さんといった「派手さはないがペースを保って走り続けることができる」タイプの選手がいるので、こちらも力は抜けない。
相変わらず脚は痛い。
橋のところで降りる度にふくらはぎが攣る。
ストレッチする時間ももったいないので、無理やり乗車してスタンディングしながら筋肉を伸ばす。
それでも続くシングルトラックは、前の周よりは精神的には楽にクリアすることができた。
4周目。
ゲレンデに出ると、前の選手との差が少し縮まっていることに気がついた。
フィードゾーンの少し先を登るその姿は、かなり辛そうだ。
これなら、登りで射程距離に捉えられるかもしれない。
3周目同様、ゲレンデの登りではダンシングでペースを上げる。
これなら最終周回には捉えられるだろうと思ったが、向こうは予想以上に脚が売り切れていたようで、ゲレンデを下って最初のシングルトラックに入ったところで追いついた。
手で、先に行けと促している。
そのまま前に出て、シングルトラックを登る。ここで差を広げなければ、また下りで追いつかれてしまう。
あとはただマイペースで走るだけ。
橋から先のシングルトラックでは、がむしゃらに頑張ってもたいしてペースアップはできないし、ゴール前に力尽きてしまいそうだったので、ここでも士幌と同じ戦法を取った。
テクニカルなシングルトラックの中にも、ところどころに走りやすい部分はある。ほんの数メートルでも、その部分だけ回転を上げる。
1周4.5kmの長丁場では、これをやるかやらないかでラップタイムはかなり変わってくるだろう。
トップとの差は5分くらいは開いているようで、とても追いつける状況ではないが、最終周回で順位を下げるような真似はしたくない。
とにかくペースを維持することに専念した。
そしていよいよ最終5周目。
登りは相変わらずダンシングで攻める。後ろとの差を広げられるのも、前との差を少しでも縮められるのも、ここしかない。
登りながら、MCの声に耳を傾ける。
大丈夫、後ろとの差はかなり開いている。大ポカをしない限り追いつかれることはないだろう。
前との差はそれ以上に開いているが、もしかしたらトラブルで遅れる選手が出るかもしれない。レースでは、フィニッシュラインを越えるまで「絶対」はない。とにかくペースは落とさないように気をつけてシングルトラックに入る。
これで最後ということで、林の中でずっと声援を送り続けていたオーストラリア人選手に手を上げて応え、登りで力を絞り出す。
橋を越えた後のきつい区間も、これで最後と思えばなんとなく気楽だ。
頂上を過ぎて下りに入り、ゴールが近づいてくる。
トップはもうゴールしている頃だろう。後ろが追い上げてくる気配はない。このまま4位でフィニッシュすることになりそうだ。
……しかし。
ここで急に、不安になってきた。
これは本当に5周目だろうか。
実は数え間違いで、もう1周残っているのではないだろうか。
さすがに、この状況でもう1周なんて無理だ。
そういえば、前の周回でジャンは鳴っていなかったような気がする。いくら疲れていても、あの鐘の音を聞き漏らすわけがない。
……いやいや、そういえば今日は、朝から一度も鐘は聞いていないはずだ。
そういえば、前の周回ではホイッスルを吹いていた。スポーツクラスでもあのホイッスルは鳴っていた。
その時は、選手通過の際にギャラリーに注意を促すためのものだと思っていたが、あれがジャンの代わりだったのではないだろうか。
その証拠に、2周目や3周目の通過時にホイッスルを聞いた記憶がない。
うん、そうに違いない。
そうに決まっている。
そうであってくれ。
祈りながら、林の中から出る。
チェッカーフラッグが振られていて、その先のコースが閉鎖されているのを見て、安堵の息を漏らしながらフィニッシュラインを越えた。
ということで初めての天狗山、初めてのエリートクラスのレースは、予想以上にいい4位という結果でした。
しかし今回は参加人数も少なかったし、3位と4分半、トップとは6分以上の差、それに対して5位との差が2分弱ということを考えると、素直に喜べる数字ではありません。
士幌のタイムがエリート8位相当だったので、それよりも良かったといえば良かったのですが。
いやもう、今回は本当にきついコースでした。
士幌や大滝は太腿にダメージが来るコースでしたが、ここはふくらはぎが痛めつけられます。
平坦なジープロードが長い士幌では、休もうと思えばどこでも休めましたが、天狗山ではゲレンデの登り以外に息をつける場所がほとんどありません。
あの登りが唯一、心のオアシスでしたね(笑)。
そんなわけで、エリートでもそれなりに戦っていける自信はつきましたが、上位を狙うにはまったく力不足であることも思い知らされたレースでした。
表彰台争いをするためには、1周あたり少なくとも1分を縮めなければなりません。
苦手な下りやガレ場を上位陣並みに走るというのは一朝一夕にできることではありませんから、ここはやはり登りであと30秒稼いで、下りやガレ場でのロスを30秒減らすという方向で考えていきましょう。
本当は、ロードのスプリント練習とかXCの下りコーナーの練習もしっかりやらなきゃダメなんでしょうけど、楽しくない練習は続かないですからね。
そもそもオールマイティに何でもこなせるほど運動神経がいいわけでもないし、年齢的にも無理がありますから、当面は得意なこと、楽しいことを徹底的に鍛える方向で行きたいと思います。
スプリントや下りの能力は、ヒルクライム能力がもうこれ以上どうやっても伸ばせなくなってから考えようかと。
それにしても、MTB乗ってて「下りが楽しくない」と言う人間は少数派でしょうね。
「下りを楽しむために仕方なく登ってる」という人は多いけれど、最近の私は「登っちゃったから仕方なく下ってる」状態です(苦笑)。
いやまあ、とんでもなくテクニカルでなければ下りも楽しいですけど、やっぱり登りはそれ以上に楽しいものです。
さて、次は藤野の4時間耐久。
もちろんソロでの参戦です。
あくまでも本命サロベツに向けての持久力トレーニングという位置付けですが、去年の石狩4耐でも入賞できたことだし、今回も上位を狙ってはみようと思います。