■第2回サロベツ100マイルロードレース

主催 北海道自転車競技連盟
開催場所 豊富町大規模草地、特設コース
車種 ロード
概要 公道ロードレース
クラス S-4(2周回、40km)


■試走編

 試走時に書いたメモより(原文のまま)

------
 スタート直後、ややキツいアップダウン。
 道道は高速コース、追い風。
 軽い登り(アウター可)
 しばらく平坦。
 9km手前登り(アウター可)
 長い下り、緩いカーブ。
 11km、長い登り(アウターではキツイ)
 アウターローからインナーに落とすとチェーン外れるので、手前の橋でインナートップにしておく。
 11.5km〜長い下り、左からの風強い。
 〜13.58km、平坦or緩い下り、高速コース。
 13.58km、左折急、注意。向い風。
 〜15.5km、緩い登り、アウター可、向い風。
 〜16.92km、緩いアップダウンの連続。アウター可。
 16.92km、左折急、注意。
 〜19.2km、アップダウン。アウター可。
 19.2km〜下り
 20km過ぎ〜登りゴール。20.3km。
 手前に段差アリ注意。
------

「これなら勝てる……」
 試走の終盤、思わずそんなセリフが漏れた。
 もっと平坦に近いなだらかなコースを予想していたのだが、意外とアップダウンが多い。
 コース後半がコレなら確実に集団はバラける。最悪でも少人数のスプリントに持ち込めるはず。上位は間違いない、あとはどこまで順位を上げられるか。

 とりあえず作戦は、1周目は集団の中で様子見。ただし誰かが逃げたら必ず追う。
 集団のまま後半に入ったら、道道の追い風区間か登りでアタックをかけて集団の人数を絞る。
 残り3kmで余力があったらアタックをかけてそのままゴールを目指す。

 ……まあ、実際にレースが始まったらこんな作戦通りに進むことはまずないのだが。


■レース本編

 午前5時前に起床。
 心配していた雨も降らずに済みそうな雰囲気だ。風も昨日よりは弱まっている。
 コンディションは悪くない。
 早めに受付と出走サインを済ませ、集合時刻まで入念にアップと栄養補給を行う。
 リアディレイラーがやや不調だ。完全には直せないものの、なんとかレースに支障ない程度に調整する。この際、多少のチェーン鳴りには目をつぶるしかない。

 8時40分、スタート位置に着く。前から3列目、悪くない。
 昨日、温泉で偶然会ったどりでちゃちゃき氏に「M君が手強い」という話を聞いていたので、その姿を確認する。XCレースではお馴染みのジャージを着た姿は、確かにS4としては速そうな雰囲気を持っている。目を離さないようにしておこう。

 8時45分、定刻通りにスタート。
 コースも広く長丁場のレースなので、比較的ゆったりとしたペースで始まる。
 私の位置は集団の真ん中よりやや前方。
 M君が積極的に集団先頭に出て行くが、私は彼の動きに注意を払うだけでポジションキープ。
 やがて集団は道道に出て、追い風を受けてペースが上がっていく。積極的な選手は集団の前方に上がろうとはするものの、そこからアタックをかける者はいない。
 最初のちょっとした登りで試しに前に出てみることにする。ペースを上げて、登りに強い選手と弱い選手を見極めようという算段だ。
 ……が。
 集団のペースを上げるだけのつもりが、坂を前にしてついつい条件反射的にアタックをかけてしまう。
 短い登りで一気に差が開くが、しかし追ってくる者はいない。
「ちっ、来いよ。やる気のある奴はいねーのかよ?」
 少人数の積極的な逃げ集団を作り、メイン集団を早々に置き去りにするのが理想の展開だったのだが、なかなか思い通りには行かない。
 だからといってすぐに集団に戻っては面白くないので、登りが終わってもペースを落とさず逃げを試みた。
 集団との差は100m近くに開くが、牽制しあっているのか意思統一ができていないのか、あるいは逃げ切れるわけがないと舐められているのか、積極的に追ってくる様子はない。
 9km地点と11km地点の登りはあえて全力アタックをかけず、集団との距離を保ちつつ頻繁に後ろを振り返って誘いをかける。
 本音を言えば中指を立てて「かかってこい!」とでも言いたいところではあるが、隣でモトがビデオカメラを回しているので自粛する。集団全員を怒らせたら怖いということもあるが。

 登りが終わって長い下りと平坦な直線。ここは追い風ではなく横風になるので、疲労もたまってペースが落ちてくる。
 さすがにこのままでは後半のアップダウンがきつい。ペースを落として集団に戻ろうか……と思ったところで背後に気配。
 いつの間に集団から飛び出してきたのだろう、一人で追いついてきたのは、後から知ったことだが道新杯での落車仲間のA君だ。どうやら逃げに乗ってくるつもりらしい。
「遅せーよ、俺は疲れたから集団に戻りたいんだよ!」
 ……とは思っても口に出しては言えない。
 こうなったら2人で行けるところまで行くしかない。『シャカリキ!』をバイブルとする者にがここで言うべきセリフはひとつ、「ゴー・フォー・ブロークン」だ。
 平坦区間の後半、2人で先頭交代して少しだけ脚を回復させることができた。

 やがてコースは道道から大規模草地牧場へ入り、向い風のアップダウンが続く。
 さすがにきつい、が、小さな登りが続くこの状況では集団のメリットもあまりないのか、差はほとんど縮まらない様子だ。
 結局、2人エスケープのまま1周回目を終えた。最初のアタックから12〜3kmほどを逃げたことになる。
 こうなるとさすがに集団にも焦りが出てくるのか、2周回目に入って間もなく、例のM君を先頭に4人の追撃集団が追いついてきた。
 それはこちらも予想の範疇。追撃集団もそのままアタックをかけるつもりはないらしく、合流して6人の先頭集団ができあがった。
 6人が綺麗に先頭交代しながら道道の追い風区間に入る。
 こうなると速い。
 道道に入ってさほど行かないうちに、振り返ってもメイン集団が視界に入らなくなった。
 これで勝負は6人に絞られる。とりあえず入賞圏内は確定だ。
 しかし、それで満足するわけにはいかない。落車のせいでポイントがない私の目標は最低でも表彰台、あわよくば優勝なのだから。

 道道の高速区間はローテーションで脚をためていく。平坦、追い風、6人ローテーションと好条件が整っているので、登りが始まる頃には、脚は1周目と変わらないと感じるくらいに回復していた。
 ここでアタックするべきだろうか。
 いや、それは無謀だ。ここでアタックしたら1対5の戦いになってしまう。
 いくら回復したとはいえ、2度目は力尽きるのも早い。1周目と同じ展開ならゴールまではもたない。
 かといって6人仲良く最後まで行ってゴールスプリントなどという展開は下の下策。
 まずは頭数を減らすしかない。
 普通に先頭交代のふりをしながらも、登りではできるだけ前を引くようにする。
 決して露骨なアタックはしない。自分にとっては普通の、しかし坂に強くない者にとっては少々辛いだろうペースで坂を登ってみる。
 それで、2、3人はどこの登りでもチギれると確信する。長い二つの登りで遅れずについてきたのはA君とM君だけだ。
 やはりこの2人は強い。登りで本気のアタックをかけたら差をつけることはできるかもしれないが、そうなると後の下りでこちらの脚が売り切れてしまう。
 アタックは最後の登りまでとっておくしかない。そこまではペースを維持して脱落者が出ることを期待する。

 2周目の大規模草地牧場のアップダウン。
 さすがに苦しい。
 しかしそれは皆同じ。少しずつ後ろが遅れ始める。
 A君だけがついてきているが、後ろの4人もまだ射程距離内。力を緩めたらすぐに捕まってしまう。
 ここで救いは、先にスタートしたクラスの後尾に追いつき始めたことだ。ペースが遅いので協力はできないが、登りで前を走る姿があるだけでも力が湧いてくる。
 A君と2人で逃げ続ける。
 さすがに脚はほとんど残っていない。登りではできるだけ前を引くようにするが、下りや平坦は極力A君に任せる。
 A君もきついのかペースは上がらない。しかし心配していたM君の追い上げはない。
 残り2kmを切ったあたりで、追いつかれるどころか後ろとの差はむしろ広がっていることに気がついた。
 ……よし。
 まだ、力はいくらか残っている。もう後ろに負けることはない。

 一騎打ち、だ。

 最後のアップダウン、ここまで極力使わずにきたダンシングでペースを上げる。もう先頭交代は促さず、A君がチギれることを期待する。
 それでもA君はついてくる。ここまで走った後での登り、並のS4クラスなら簡単にチギれるはずのペースだが、前には出られないものの遅れることもない。
 確かに強い。全力ではないとはいえ、登りで振り切れないとは。
 ならば下りのスピード勝負。
 先刻までは下りで前に出てもペースを上げられずにいた。A君も限界のはずだ。
 登りが終わると同時に一気にシフトアップ、加速。
 疲れ切った脚で出せるだけの力を振り絞る。
 それでも振り切れない。後ろにぴったりついている。

 ……やるしかない、か。
 ここで覚悟を決める。単独ゴールは不可能だと。

 ――ゴールスプリント。

 それはロードレースの華、しかしできれば避けたたかった展開。
 とはいえこのコースは登りゴール、勝機がないわけではない。

 下りの後半、わずかにスピードが鈍ったところでついにA君が前に出る。
 反応が一瞬遅れ、ドラフティングの有効距離外まで離されてしまう。
 ゴールスプリントでは致命的ともいえる距離。

 だけど、まだ終わっていない。
 あと200m弱、平地のスプリントなら致命的な差でもここは登りゴール。
 必死にペダルを踏む。
 動かない脚を叱咤する。
 しかし差が縮まらない。
 ここまでなのか……

 違う。
 そうじゃない。
 なんのために毎日、家の前の登りで200mのスプリントをしている?
 違う、最後の最後の力を振り絞っての登りのスプリントというのは、こんなものじゃない。
 脚に力が残っていないのなら、背筋力で走れ。腕力で走れ。
 上体を大きく揺らして、バイクを左右に力いっぱい振って。
 教科書では禁じられているフォームだろうとなんだろうと、ゴールスプリントでは速い者が正しい。
 思い出せ。
 あの、心臓を口から吐きそうになりながらも、登りの最後の50mを最も速く走れるフォームを。

 ペースが上がる。
 差が縮まっていく。
 ほら、向こうも限界だ。全然遅いじゃないか。
 登りはこっちの方が速い。

 ああクソ、まだ差がある。
 だけどペースはこっちの方が速い。
 可能性はゼロじゃない。
 登りなんだから、向こうの脚がいきなり止まるかもしれないじゃないか。
 クソ、もうダメか。
 まだ諦めるな。
 最後のひと漕ぎまで。

 ……
 …………

 目の前でゴールラインを越えていくバイク。
 振られるチェッカーフラッグ。
 脚から力が抜けそうになる。
 ああクソ、力を抜くな、無様な姿を晒すな。ゴールラインを越えるまでは。
 あとひと漕ぎ、しっかり踏め。クライマーは最後まで力強くあれ。
 結果的には負けたにしろ、最後まで戦うことを諦めなかった証のために。


■あとがき

 ……ということで、S4のレース展開をちょっとカッコつけた文章でまとめてみました(苦笑)。
 入賞者のリザルトは以下の通りです。

順位ゼッケン名前チームタイム
1206安藤N・ウィンズ1:07:01
2216五日市ONOファクトリー1:07:02
3214松本GAS PANIC1:07:33
4220稲垣 1:07:34
5217安部アティック1:08:10
6207田沼アティック1:09:24

 負けはしたものの、楽しかったですねー。
 コースは走りごたえがあったし、常に自分から動いてレースを作って、一騎打ちのゴールスプリントにまで持ち込めたんですから。
 なんというか……こんな美味しい展開、そうそうないですよ。このレースだからこそ、ですね。手強いライバルになるはずの室工や酪農大の学生組が試験前で不参加でしたから(笑)。

 スプリントで負けるところまで含めて、事前に予想していた通りというのは笑えます(苦笑)。
 そして、道新杯落車リタイア組のワン・ツーフィニッシュというのはちょっと出来過ぎの感もありますね。
 ちなみに安藤君はあの落車でスポークを折ったそうです。
 ……スポークならいいですよ、すぐ交換できるんですから。
 肋骨の修理は、時間もお金もスポークの比ではありません(笑)。

 それにしても……今回もまたやっちゃいましたね〜。
『真っ先にアタック』
 や、せっかくS4では勝ち負けする力があるんですから、積極的なレース展開は望むところなんですけど、たまには他人の逃げに乗ったり、アタックを潰したり……ということもしてみたいなぁ、と。
 ……多分、今のS4では私が一番短気なんでしょう(苦笑)。
 いやホント、今回は誰かがアタックしない限りは1周目は様子見のつもりだったんですよ。
 だけど……ほら……ねぇ?
 登りがあると……ねぇ?(苦笑)
 次回は藻岩山HCと1000mTTなのでこうした駆け引きは関係ないですけど、ツールの市民ロードや市民大会では「忍耐」を合い言葉に走ってみたいと思います。
「忍耐……」とつぶやきながらアタックかけてるかもしれませんが(爆)。

 まあとにかく、ロード復帰戦としては最高に楽しいレースでした。
 来年も、このレースは何があっても参加しましょう。

 ……今回ひとつだけ不満があるとすれば、最後のお楽しみ抽選会で運がなかったことですね(苦笑)。
 こっちも来年に期待です。

もどる