６

　八月上旬のある日、私は初めてラッキーと結ばれた。
　その翌日も、また翌日も、毎日毎日ラッキーとセックスした。
　早朝、まだ涼しいうちに上村くんの家へ行き、短い散歩の後でラッキーに朝ごはんをあげて。
　一度家に帰って自分も朝食を食べて、勉強をして、昼食の後でまた上村くんの家へ行って。
　午後はずっと、ラッキーとベッドの中で過ごす。
　いっぱい舐めてもらって。
　うんと感じさせてもらって。
　腰が抜けるまでセックスして、そのまま力尽きて夕方までお昼寝。
　夕方涼しくなってから散歩に行って、晩ごはんをあげる。
　――それが、毎日の日課だった。
　私はすっかり、ラッキーの虜になっていた。
　彼とのセックスは信じられないくらいに気持ちよくて、とても興奮する。
　私って普段が真面目な分、こういうことがあるとのめり込むたちなのかもしれない。あの二年前の夏だって、ほとんど毎日のようにデートとセックスを繰り返していた。
　セックスしている時、私は解放される。真面目な委員長から、ただの牝犬になる。
　一切のしがらみのない、自由な時間だった。


　ラッキーとの通い同棲生活は、上村くん一家が旅行から帰ってくるまで一週間続いた。
　ずいぶん日焼けした上村くんから、珊瑚のイヤリングをおみやげにもらって。
　これで、私の夏休みの一大イベントは終わり。
　少し寂しい。
　この先当分、ラッキーとセックスするチャンスなんてないだろう。これもまた、二年前と同じように一夏の想い出で終わってしまうのだろうか。
　笑顔を作っておみやげを受け取りながら「上村くんが冬休みも家族旅行に行けばいいな」なんて考えてしまう。
　だけど嬉しいことに、次のチャンスは自分で思っていたよりもずっと早くにやってきたのだ。

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　夏休みも残り数日となったある日。
　私は昼食を済ますとすぐに、上村くんの家を訪れた。
　夏休みの宿題を写させてほしい、と頼まれたから。
　一週間沖縄で遊んでいた彼は、当然のように宿題なんてまるでやっていない。根が真面目な私は、ラッキーとの愛欲の日々を送りながらも宿題はちゃんと終わらせている。
　上村くんがノートを写している間、私はベッドの上でラッキーとじゃれ合って遊んでいた。「写すのまで手伝ってあげるほどお人好しじゃない」って口では言ったけど、少しでもラッキーと遊んでいたかったというのが本音。
　もちろん、上村くんが見ている前でエッチなことはできない。だけどキスしたり、抱きつくふりをして胸を押しつけたりするだけでも結構楽しい。
　そこへ、電話がかかってきた。上村くんの携帯にじゃなくて、家の電話。
「はい、上村……あ、姉貴？」
　どうやら、お姉さんかららしい。ＯＬをしているお姉さんは、中央区で一人暮らしをしていると聞いたことがある。
「え？　ああ、来てるよ。……ああ、仕方ない。持ってってやるよ」
　電話を切った上村くんは、面倒くさそうに頭を掻いた。
「ちょっと、姉貴のところに荷物持って行かなきゃならなくなった。多分、一時間半か、二時間くらいで戻ると思うけど……」
「あ……だったら私、留守番してようか？」
「いいのか？」
「どうせ、夕方また来るんだし」
　もちろん今日も、夕方の散歩は一緒に行くつもりだった。
　私は、心の中で万歳していた。
「君が戻ってくるまで、ラッキーと遊んでる」
「そっか。じゃあ頼むわ」
「別に、急がなくてもいいよ」
　散歩の時間まで戻らなくてもいいから、できるだけゆっくりしてきて――とは言わなかったけれど。
　私が「留守番してる」と言ったときの上村くん、心なしか嬉しそうに笑みを浮かべたように見えたんだけど、気のせいかな。
　上村くんは、私がここにいることが嬉しいんだろうか。
　そういえば上村くんって、私のことをどう思っているんだろう。私たちの関係って、いったい何なんだろう。
　これまで、深く考えたことがなかった。
　毎日のように遊びに来る私のこと、いったいどう思っているんだろう。まさか「ラッキーとの散歩」が口実だなんて思われていないよね。
　少なくとも、迷惑そうな素振りを見せたことは一度もない。
　そして――
　私は、彼のことをどう思っているんだろう。上村くんが出ていった後、ぼんやりと考えていた。
　クラスメイト。
　ラッキーの飼い主。
　外見は少し怖いけれど、不思議と、警戒心を抱かずに一緒にいられる男の子。
　そういう意味では、私にとっては少し特別な男の子なのかもしれない。
　だけどそれ以上の感情……たとえば恋愛感情を抱いているかといえば、それはない。上村くんよりもラッキーの方がずっと好き。迷うことなくそう断言できる。
　だけど、高校生の男女が毎日のように校外で会って、時には家にも上がって……って、傍目には付き合っているように見えるだろう。
　上村くんの家族にはそう思われているようだし、夏休みに入る直前「委員長って、最近上村と仲いいよね。付き合ってンの？　ちょっと意外な組み合わせだけど」と友達に訊かれたこともある。
　その時は正直に、本当のことを言った。私は犬が大好きで、彼の飼い犬がすごく可愛いから散歩に付き合わせてもらってるだけ。上村くんと付き合っているわけではない――と。
　もちろん「獣姦願望がある」なんてことは口が裂けても言わないけれど。
　それでも友達は私の言葉を「まだ、付き合っているわけではない」と解釈したようだった。多分、女子高生としてはそう考えるのが普通なのだろう。
　だけど私は、自分の気持ちがわからない。周りがそうやって騒ぐから「ひょっとしてそうなのかな」と思っているだけかもしれない。
　第一、ラッキーとセックスしたいという願望はあっても、上村くんと同じことをしたいとは別に思わない。
　かといって、もしも二人きりのときに上村くんの方から迫ってきたら……と考えても、別に恐怖感も嫌悪感もない。ただしそれが「そうなってもいい」と考えているためなのか、「彼はそんなことをしない」と信じているためなのかはわからない。
「んー、わかんないや。ね、君はどう思う？」
　ラッキーに抱きついて訊いてみても、こっちの話がわかっているのかいないのか、私の顔をぺろぺろと舐めるだけ。
「や……ぁん、くすぐったい！」
　本気ではない私の抵抗を無視して、ラッキーがのしかかってくる。
　すっかり、その気になっているらしい。もちろん私も、いつでもＯＫなんだけど。
　上村くんは「一時間半か二時間で戻る」と言っていた。余裕を見ても、一時間以上は大丈夫。めったにないこのチャンス、逃す手はない。
　時間が惜しかったのと、万が一上村くんが戻ってきたときにすぐ誤魔化せるように、服は脱がないことにした。
　今日はミニスカートだから、下着だけ脱げば十分だ。胸を舐めてもらえないのは少し残念ではあるけれど。
　ショーツを足首まで下ろして、ベッドに仰向けになった。
　スカートを腰までまくり上げ、脚を開く。
「……きて」
　既に潤いはじめているその部分を指で開いて、ラッキーを誘った。
　鼻先が押しつけられる。
　ラッキーの冷たい鼻の感触に、身体がぴくりと震えた。
「んっ……ふっ……ん……、あっ……はぁ……っ！」
　ラッキーに舐められて、私はたちまち燃え上がる。
　襞に絡みつくような、大きくて柔らかくて、器用な舌。
　何度舐められても、いい。
　身体中の神経が痺れるようだ。
　久しぶりだからか――とはいっても、最後にしてからまだ十日も経っていないんだけど――すごく感じてしまう。
　一気に昇りつめていく。
　腰を突き上げて、ラッキーの舌を奥へと導く。
「はぁっ！　あぁぁっ！　あぁんっ！　あぁんっ！　んんん――っ！」
　舐められ始めてからほんの数分。
　私は、簡単に達してしまった。
「……は……ぁぁ……」
　もったいない。こんなに簡単にいっちゃうなんて。
　もっともっと楽しみたかったのに。
　だけどもちろん、これで終わりじゃない。
　そう。まだまだ楽しめる。余韻に浸ってる場合じゃない。
　ラッキーが私の上にのしかかってきて、腰を振っている。
　私は俯せになって、ラッキーが入ってきやすいように、膝を立ててお尻を上げた。
「あっ！　あぁっ、あぁん！」
　ラッキーは、簡単に中へ入ってきた。毎日セックスして、私もラッキーもずいぶん慣れて、上手になっていたから。
　機関銃のような勢いで、腰が打ちつけられる
　潤滑液は溢れるほどたっぷり分泌されているはずなのに、激しく擦られる膣壁は火傷しそうなほどに熱い。
「あぁっ、あっ、あんっ！　はぁっあぁぁっ！」
　私は断続的に、短い悲鳴を上げ続けた。ラッキーの速すぎる腰の動きに、呼吸が追いつかない。
　堪らない。
　これが欲しくて堪らなかった。
　背中に感じるラッキーの重み。
　お尻に打ちつけられる腰。
　私の中で、むくむくと大きくなっていくラッキーのペニス。
　何もかもが、気持ちいい。
「あぁっ、ん……んん、あ……」
　コブが、押し付けられている。
　私はもう、なにも躊躇うことなくそれを受け入れた。
　指で自分自身を大きく広げて、膨らみつつあるコブを中へと押し込む
「んっ……んんっ……あぁぁぁっ！」
　何度も経験したことなのに、一番太くなった部分が膣口を通り抜ける瞬間は、やっぱり痛みのあまり悲鳴を上げてしまう。
　だけど、その一瞬の痛みすら病み付きになっていた。
　私の中に収まったコブが、大きくなっていく。
　この時はいつも、お腹いっぱいに膨らんでいくみたいな気がする。大きな丸い固まりが、私の中にあるのを感じる。
　腰を少し動かしただけで、頭のてっぺんまで突き抜けるような快感が走る。
「はぁ……あぁぁっ！　うん……んんっ……はぁぁっ！」
　気持ちいい。
　気持ちよくて、気持ちよくて。
　……気が狂いそう。
　私は夢中で腰をくねらせていた。その結合部から、少しでも多くの快感を絞り出そうと貪るように。
　お腹の中で、射精が始まっていた。
　人間のものに比べるとさらっとした感触の熱い液体が、子宮へと注がれている。
「あぁぁっ！　あぁっ…うぅぅっく！　……うぁぁぁぁぁぁっっ！」
　子宮が満たされていく感覚の中で、私はたちまち、今日二度目の絶頂を迎えてしまった。
　頭の中が真っ白になって、全身から力が抜ける。
　ベッドに突っ伏して、大きく深呼吸を繰り返す。
　その間もラッキーは私の中に精を放ち続けている。
　私の身体の中の残り火は、すぐにまた炎を上げそうな雰囲気だった。こんなに感じてしまったのに、まだ満足しきってはいない。
　しかし――
　朦朧としていた私の意識に、割り込んでくる声があった。
「あの真面目な委員長が、自分から進んで犬とセックスしてるなんて……」
　聞き慣れた、男の子の声。
　上村くんの声だった。
「――――っ！」
　まさか、そんな。
　顔を上げた私の視線の先に、上村くんがいた。
「うーん……。話には聞いても、実際にこの目で見なきゃとても信じられんな……つーか、こうして目の当たりにしても信じられんぞ」
　部屋の入り口に腕組みをして立っていた上村くんは、妙に感心したような口調で言った。

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