〜4〜


 部屋の扉を開けると、ベッドに座っていた兄貴がこっちを見た。
 あたしは、手を後ろに組んで兄貴の前に立つ。
「…どぉ?」
「…うん。可愛い可愛い」
 兄貴は笑って言う。
 ちょっとだけ安心して、兄貴の隣に座った。
 胸がドキドキしてる。
 これから、どうなるんだろう。
 あたし初めてだもん、経験豊富な兄貴にまかせておけばいいんだよね。
 ピッタリと身体を寄せると、兄貴の体温が感じられた。
 生まれたときからずっと、傍にあった温もり。
 とても懐かしくて、気持ちいい。
「香奈…」
 兄貴の手が、あたしの肩を抱く。
 ぴくりと、小さく震えた。
「緊張してるな?」
「…当たり前じゃない」
「うん、初々しくて可愛いな」
 耳元でささやかれる。
 唇が、耳たぶのうぶ毛に微かに触れる。
 ちょっとくすぐったくて、首を縮めた。
 顎の下に手が当てられる。
 逆らわずに、上を向いた。
 兄貴の顔がすぐ近くにあった。
 あたしは軽く唇を突き出すようにして、目を閉じる。
 柔らかな唇が触れた。
 …キスは初めてじゃない。
 だから少し余裕を持って、兄貴の唇の感触を確かめることができた。
 しばらくキスを楽しんだあとで、ベッドに仰向けにされる。
 兄貴の身体が覆いかぶさってくる。
 もう一度キスをした。
 こんな体勢でのキスは初めて。
 ベッドに横になってのキスは、座ってのキスより何倍もエッチな気がする。
「う…ん」
 舌が、入ってきた。
 ディープキスは初めて。
 兄貴の舌と、あたしの舌が触れる。
 不思議な感触…。
 ぎゅっと、兄貴の身体に腕を回した。
 兄貴の舌が、口の中で動いている。
 あたしの舌が、あたしの意志とは無関係に動いてそれに応えた。
 舌が絡み合う。
 初めて知った。
 これまで、キスは単なる愛情表現の手段だと思っていた。
 だけど本当は違う。
 キスは、それ自体とても気持ちのいい行為なのだ。
「ん…ぅ…ぅん…」
 もっと、もっと、うんと深くつながりたい。
 精一杯舌を伸ばして、兄貴の舌に絡ませる。
 柔らかな粘膜同士が密着して擦れ合う。
 それはいわば、口と口とのセックスだ。
 あたしがキスに夢中になってる間、兄貴の手はあたしの胸を触っていた。
 あたし、まだ胸はあんまり感じない。
 でも、セーラー服の布地を通して乳首をくすぐられると、くすぐったいような、ヘンな感じがする。
 あん…。
「やぁ…」
 兄貴の手が、セーラー服の中に入ってきた。
 直接、胸を触ってる。
 手のひらですっぽりと包み込んで、揉んでる…。
 指先で、乳首をつまんでる…。
「は…ぁん…」
 思わず、声が漏れてしまう。
 すごく恥ずかしい。
 そしてくすぐったくて、少し気持ちいい。
「…あたし、胸ちっちゃいもん。触っても面白くないっしょ?」
「小さい胸には小さいなりの良さがあるんだよ」
「男の人ってみんな、巨乳が好きなんじゃないの? こんなちっちゃな胸で興奮するの?」
 そう言ったら、兄貴はあたしの手をつかんだ。
 そして、自分の股間へと導く。
 そこは…。
 あ、固い…。
 固くなって、大きく膨らんでいる。
 勃起…してるの?
「香奈とエッチしてるから、こんなに興奮してるんだぞ」
 そう…なんだ…。
 あたしは、兄貴のジーンズのファスナーを下ろした。
 手を入れて、兄貴のものを触って…取り出してみる。
 ビデオでは先刻見たけど、本物は初めて。
 びっくりするくらい大きくて、太くて、固くて…。
 そして、熱い。
 そっと握ってみる。
 ビクン、ビクンて脈打ってる。
 こんな大きなものがあたしの中に入るなんて、信じられない。
 なんだか怖い。
 あそこが裂けちゃうんじゃないかな…なんて。
「ビデオの男の人より…おっきいね」
「だろ? 自慢の逸物だからな」
 兄貴が笑う。
 そっか。兄貴のって、大きいんだ。
 あたしは小柄でしかも初体験なのに、大丈夫かな。
 やっぱり、最初は痛いんだろうなぁ。
 そんなことを考えながら、手を少し動かしてみる。
 兄貴が微かに声を上げた。
 それで、この奇妙な物体が兄貴の身体の一部なんだって実感できた。
 ちょっと恥ずかしいけど、まじまじと観察してみる。
 男の人のって、こんなふうになってるんだ。
 何かヘンなの…。
「こうすると、気持ちいいの?」
 手を動かしながら聞く。
 上下に動かしたり、回すようにしてみたり、握る強さを変えてみたり、いろいろと試してみる。
 その度に兄貴は少しずつ違った反応をした。
「ああ…気持ちいい」
 優しい声で言う。
 そして、あたしの頭を撫でてくれる。
 それが嬉しかった。
 だから、もっと兄貴を喜ばせて上げたいなぁって。
 そう思った。
 ビデオで観たときには気持ち悪いって思ったのに、あたしはそうするのが当たり前のように、唇を寄せた。
 そっと、キスしてみる。
 手で握っている部分はすごく固いのに、先っぽの部分は意外と柔らかかった。
 亀頭…っていうんだっけ。
 たしか、スポンジみたいな構造なんだよね?
 温かくって、柔らかい。
 少しだけ口を開いて、舌で触れてみた。
 他に喩えようのない、不思議な感触だった。
 そのまま、亀頭の部分を舐めまわす。
 兄貴が、気持ちよさげに溜息をついた。
 それで調子に乗ったあたしは、思い切って全体を口に含んだ。
 そうすると、外から見てるよりもずっと大きいって実感する。
 口の中いっぱいに頬ばっている感じ。
 舌を動かしてみる。
 歯を立てないように気をつけなければいけないってことは、知識では知っている。
 だけど、こんなに大きなものをくわえてそれを実行するのは、とても難しいことだった。
 あたし、ちょっと八重歯だし。
 歯が当たっちゃったらゴメンね、兄貴。
 それでも、少しずつ頭を動かしてみた。
 勢い余って喉の奥に当たって、吐きそうになったりもしたけど我慢する。
 初めてのフェラチオ…。
 あたしは、その行為に夢中になっていた。
 それは、キスとか、手で触ったりするのなんか足元にも及ばないくらい、いやらしい行為だった。
 しかも、実の兄貴のをくわえている。
 そう考えただけで、すごく興奮してしまう。
「ん…、ん…」
 先刻のビデオを思い出して、真似をして頭を動かした。
 強く吸ってみたり。
 おしっこの出る穴を舌先でくすぐってみたり。
 そんなことも全然イヤじゃなかった。
 相手が兄貴だからなのか、それとも単にあたしはフェラチオが好きなのだろうか。
 だんだんコツがわかってきたから、少しずつ動きを速くしていく。
「はぁぁ…。そう、その調子…イイぞ」
 兄貴は両手で、あたしの頭を包み込むように撫でる。
 息づかいが、先刻よりも荒くなっているのがわかる。
 気持ちイイ…の?
 あたしの口で…感じてるの?
 生まれて初めてのあたしのフェラチオで、感じてくれてるの?
「んんっ…んっ…んん…」
 あたしは夢中で頭を動かした。
「…香奈っ!」
 頭を撫でてくれていた兄貴の手に、急に力が込められる。
 両手でぎゅっと頭を掴んで、自分の股間に押しつけるように。
「…っ、んん〜っ!」
 乱暴に喉の奥まで突き入れられて。
 一瞬後には、それが口の中で弾けた。
 どくん、どくんって脈打って、熱いものが噴き出してくる。
 どろりとした液体が、口の中を満たす。
 一瞬、気が遠くなりかけたけど、咳き込みそうになるのを堪えて、涙ぐみながら口の中のものを飲み下した。
 一度に全部は無理。
 ごくん、ごくんと何度も喉を鳴らす。
「あ…はぁ〜」
 兄貴が大きく息を吐き出した。身体から力が抜けていく。
 イッちゃったんだ…。
 あたしの口で…。
 あたしの口の中に、射精したんだ。
 涙ぐんでいるのは、苦しかったからだけじゃない。
 嬉しかった。
 何故だかわからないけれど、とても嬉しかった。
 だけど、そう感じていることを兄貴に悟られるのがなんだか恥ずかしくて、あたしは顔をしかめて見せた。
「うえぇ、ヘンな味ぃ〜」
「大丈夫か? 初心者のくせに無理するから…」
 兄貴がまた、頭を撫でてくれる。
「だって…」
 兄貴ってば、気持ちよさそうだったし。
 舐めてるうちに、あたしもなんだか、興奮してきちゃったし。
「…ね、どうだった? 気持ちよかった?」
「ああ、初めてとは思えないくらい良かった。お前、きっと素質あるぞ」
「えへへ〜」
 ちょっと…いや、本音を言えばとても嬉しい。
 でも、十四歳の女の子が「フェラチオが上手」って褒められて、喜んでていいのかな。
 …ま、いいか。「フェラチオが上手ってのはイイ女の必須条件だ」って、友達が言ってたっけ。



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